人もすなる象徴詩といふものを

われもしてみむとてするなり

ヴァン・レルベルグ「不安な女」

おまえが私を招いてくれる夢のほうへと、
私はいま道をたどりつつある。
手探りで進むしかないけれども、
私の魂はふるえ、私は立ちすくむ。

私は青い帳の下をゆき、
頭上には薔薇の花が懸っている。
天使が待ってくれているのは知っている、
しかし私は目を上げることができない。

太陽の接吻が私の肌をかすめる、
目蓋の下から私はそれを眺める。
すぐ近くでは海が歌を歌ってくれる。
なのにどうして私は泣いているのだろうか。

ああ、幸福よ、私を迎えにきてくれた者よ、
どうか、私がそこで生まれ、
そこで死にたいと思っている、
あの暗くて寂しい庭の蔭へ私を帰しておくれ。

そこでは、静寂のなかで、
私が愛するすべを心得た夢がいまなお残っている。
幸福よ、今日のこの日まで私が幸せではなかったことを、
どうか私が知らないままにしておいておくれ。

私の顔からおまえの顔と腕とをのけておくれ、
そして、お願いだから、もう少しのあいだ、
私がおまえに似つかわしくないことを、
私の魂が知らないままにしておいておくれ。

ヴァン・レルベルグ「福の神」

これはこれ福の神様、音もたてずに入らっしゃる。
家ではみながお待ちかねじゃ。
卓上はいつも万全の備えで、
夜燈もあれば祝杯もある。
ああ、福の神様の歩みのなんとお美事なこと。
まるで旅する神様のようじゃ。
門口に薔薇の花を飾るがよいぞ、
神様の居心地のいいように……
一瞥しただけで一切をご承知、
黙ってにこにこと笑っておられる。
わが家にはパンもあれば葡萄酒もある、
庭でとれた果物もあります。
大人しい、優しい神様よ、
どうぞ長くこちらにいらして下さい、
せめて今夜はお泊り下さい、
ありがたいお客様、どうぞゆっくりしていって下さいまし。

ヴァン・レルベルグ「晴朗の時」

神がわれわれに遣わされたひとときが、
慎ましやかに、いわば翼をたたみ、
ゆったりと慎重な足取りで、また静かで和やかな心もちで、
この変転常なき日々に、われわれの傍らを通り過ぎていった。
それは心貧しき教妹たちであった。彼女らはしずしずと進み、
その歩みがあまりに緩慢なので、もしあらゆるものが彼女らの永遠の出発を繰り返し告げなかったとしたら、
その場で足踏みしているように思われたかもしれない。
物思いに耽るわれわれの上を、
彼女らの優しく澄んだまなざしが静かに、
まるで彼女らがそこからやってきた壮麗な天の雲のように掠めていった。
彼女らの歩みは空気を青く染め、
その繻子の衣は朝の軽やかな息吹のごとく、
花々をたわませずに通り過ぎてゆくのであった。
そこでわれわれは彼女らが天来の存在(もの)であること知ったのである。
こういったところが、長く静かな夏の鬱蒼たる庭園にあって、
われわれの賜った美のひとときであった。
日が暮れるまで、われわれは彼女らを目で追っていた、
この比類なき夢と生命とから遥かに遠く、
彼方、過去や昨日や明日のほう、
樹々の下、道の尽きるあたりまで……

ヴァン・レルベルグ「忘却」

何にでも驚く単純な魂よ、
今朝、ある妖精の手が、
この沈黙と認可との賜物を、
一輪の花のように、おまえの額の上に置く。

この笏には主張もなければ、重さもない。
それは軽い金剛石でできている。
時のささやきは静まって、
おまえの子供らしい夢のなかですべてのものが忘れ去られる。

死滅する薔薇も、再生する薔薇も、
すべてが同じ夏の同じ薔薇だ、
違うように見えても、
つねに楚々たる点において変りはないのだ。

雲一つなく晴れ渡った青空のように、
生命はそれだけで魅惑であり、
日々、年々、
絶えざる驚きの連続である。

生命はめざめ、眺め、まばたきする。
曙が生まれ、すべては清新の気に充ちる、
すべては若々しく、笑い、歌い、光り輝く、
まるで水から上ったばかりの少女のように。

ヴァン・レルベルグ「未来の歌」

シェヘラザードよ、そちのみごとな話を続けてくれい。
すでに鳥はさえずり、夜明けがやってきた、
わしらが明日と呼んでおったその日が。

曙に薔薇の花が目をさます。
いまひと日を生き永らえんことを思え、
わしが生きておるのはそちのみごとな話を聞かんがためじゃ。
いやそうではない、わしの魂は少しも変りはせぬ、
否、これは新しき時などというものではない、
同じ時間が同じ夏の朝のうちに
延びておるまでじゃ。
過ぎ去った日々がわしにとって何であろう。
そんなものは端っからなかったも同然じゃ。
すべてのことどもは未来に属する、
いまこの時がすなわち永遠なのじゃ。
見よ、同じ枝にまた
同じ花が咲く、
わしらの頭上、わしらの心の上に拡がるのは
つねに同じ空じゃ。
夢みる女よ、さあ、話すがよい、
言葉はそちの美しい唇にのって
「欲望」の翼のように天翔けようぞ。
そちの言葉にはつねに未来がある。
歌うてくれい、そちの伝説的な声は輝かしいことどもでいっぱいじゃ、
それら輝かしいことどもはいっとき空の高みから舞い降りて、
この地上をかすめたかと思うと、
また天空へと舞い上っていくのじゃ……

シェヘラザードよ、そちのみごとな話を続けてくれい。