人もすなる象徴詩といふものを

われもしてみむとてするなり

2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

梵鐘

除夜の鐘の音が森々と響いてくる 「おまえは何ものにもなれないだろう」 そんなことはわかっているさただ物心のついたころに聞いた 大晦日の夜のゆかしい薄墨色の音を もう一度この耳で聞ければ それだけで私にはじゅうぶんさ

処世術

いいかげん気づけ この世のいさかいはすべて なわばり争いに起因することにいいかげん飽きろ 取るに足らぬなわばりをめぐって 雑魚同士で小ぜりあいをすることにいいかげん見切れ しょせんは蝸牛角上の争いであると そうして三十六計の奥の手を出せ*1 *1:闘…

異化

はじめて会ったときのことを、きみは覚えているかい。 (覚えていたから、どうしたというの) きみはぴったりとした白い服を着て、殊勝に顔をあからめていた。 袖をまくった腕は白くつやつやとして、その爪には噛んだあとが残っていた。 それを見て、おれが…

埋めた記憶

私が用を足すのはきまって地下の共同便所 なぜならその下に父の遺骨が埋まっているから たしかにこの手で父の遺骸を埋めた 同時にその記憶までも埋めてしまった床がびしょびしょ濡れた不快な便所 壁には忌わしい虫がかさこそ音を立てている 私は用を足しなが…

煉獄の魂

デジャヴュは浅薄だが ジャメヴュは奥深い見慣れたものが形を失うまで見つめよ 既知を未知に還元せよ未知から既知への道はたやすい おまえはより厳しい道 既知から未知への道をたどれ天国はデジャヴュでいっぱい 地獄はジャメヴュでいっぱいおまえは煉獄の魂…

めのわらは

しほはゆさ あまいしたたり はづむいき しろいおよびに もゆるくれなゐ