人もすなる象徴詩といふものを

われもしてみむとてするなり

2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ヴァン・レルベルグ「変容」

夕べの祈りが済み、 すべてがまるで夢のなかへと消えゆき、 世界は金色の流体のうちに眠る。目を伏せて美しい夢に耽りながら、 聖母は天使たちに囲まれて 静かに洞窟に座っている。 「神の子」はすやすやと眠っている。空はまるで薔薇の花々が 咲きみだれて…

ヴァン・レルベルグ「似寄り」

一人はもう一人にほうに身をかがめた。 二人の髪が絡まりあう、 一方は金色、片方はブロンド。 二人の寄せ合った頭は いっしょに同じ夢を夢みている。 二人は同い年で、 花が花に似ているようによく似ている。 そして互いに相手の心に語りかける。一人が言う…

ヴァン・レルベルグ「夜景」

落ちかかる夕暮れどき、 はるか東の深みから、 穏やかに、ひそやかに、 ほの暗い思考にうち笑みつつ、 神のような「夏の夜」が 歩一歩とやってくる、 光のなかに拡がってゆく影法師を従えて。 すらりとした影法師たちが 爪を閉じて佇むところに夜が歩みを留…

ヴァン・レルベルグ「春を告げるもの」

四月、朝まだき、 君によく似た金髪の妹たちが、 いまこの時、いっしょになって君のところへ押しかける。 なつかしい愛の神アモルよ。君は白い桃金嬢や山査子の咲く ほの暗い囲みにいる。 扉は枝のあいだに開き、 道は神秘に満ちている。妹たちは丈の長い服…

ヴァン・レルベルグ「蜃気楼」

あのさざめきは水のどよもしでもなければ、 葦辺をわたる風の羽音でもない。 それは夢想によって虹色に輝くひとつの魂、 その口がたわむれに発する声音はさざ波のごとく、 そよ風は月ときらめき、 歌とかがよう。 いかなる思考も、 その頭を取り巻く、 淡い…