人もすなる象徴詩といふものを

われもしてみむとてするなり

2023-01-01から1年間の記事一覧

ヴァン・レルベルグ「黎明」

ゆうべ、物に怖じた優しい魂が発した声は、 鬱蒼たる葉叢の蔭で歌を歌っていたが、 傷つけられたかよわい優雅さを笑顔に包んで、 消え失せた魂もろとも去って行った。 その不思議な慄きは夜明けを駆け抜けた。 声は「少年時代」や「他所」や「過去」について…

子守女に贈る歌(ヴァン・レルベルグ)

私がおまえのことで覚えているのはごく簡単な讃美歌だけだ。 よき天使の翼のように、 玩具の思い出とともにある子守女よ、 大切な魂よ、いまここで、 松の木の下の墓の前に 寂しく腰をおろし、 遠く地平線の彼方に美しい秋の夕陽を見、 美しい一日の終りにお…

ヴァン・レルベルグ「イン・メモリアム」

エフライム・ミカエルの墓前に 心をひとつにして膝まづき 祈りを捧げる使徒のように、 われらはここに居並ぶ、 きみはそのさなかに居たまう。ああ、静けさ……われらの歌の蔭より ひとつの声が立ち昇り、 われらのあいだに夢のように、 香のなかの燠のように拡…

ヴァン・レルベルグ「墓碑銘」

薔薇や木蔦に交じって 百合が生い出づる大理石の下に、 かつて愛と光そのものだった ひとりの少女が眠っている。夜になると、天使がきて 額の上に歓喜の印をおき、 安らかな死が彼女を 永遠の若さのうちに眠らせる。だから、嘆くことはない、 行きたまえ、旅…

ヴァン・レルベルグ「死」

ああ、その手はなんと小さく白いことか。 まるでうなだれた花のようだ……彼女は憩い、眠っている。 彼女は死に触れたのだ。その身はうつろで、すっかり軽い、 その身はこの世での役目を了えた。どうぞ彼女を連れて行ってください、主よ、 彼女は幸福に触れた…

ヴァン・レルベルグ「訣別」

宵闇が薔薇の茂みを通って行った。 このあえかなる魅惑を乱すのを恐れ、 知られざるものたちが、官能的に、 海によく似た、ヒアシンス色のヴェールで 事物を覆って押し鎮めた。 すべては静謐のうちに消えてゆき、 もはや触れえぬ昨日の日となった。 死せる事…

ヴァン・レルベルグ「夕暮時」

空が翳り 東から西へと、 沈黙のうちに 柔らかな手で 暗色の絹に蒼白い星を織り込んだ 薄紗を拡げる。黄昏と黎明との 両岸にまたがる眠りが、 夢の蔓草で、 今日の一日を明日へとつなぐ。過ぎゆく時が 歩みを止め、テラスの入口で サンダルの紐を結ぶ、 そし…

ヴァン・レルベルグ「薔薇のアーチの下で」

そこは永遠の微笑が嬉戯する 庭園にしてまた居処。 日時計の青い影と泉とが 時を刻む。 そこではすべてが思い出の中にあるかのよう。 戸口には孤独と夢想とが 二匹のおとなしいスフィンクスのようにねそべっていて、 だれもその戸口を跨げない。金の階段の上…

ヴァン・レルベルグ「曰く言い難きもの」

魂と火とのひとつがい、 翅と花との絡み合い、 君らに似合いの言葉を 私は心中に探し求める。しかし君らは曰く言い難きもの、 君らのふしぎな歌は あるかなきかの接触と放射状の沈黙とによるほか 表しようもないものだ。なればこそ、心優しい女が 委細を知ら…