人もすなる象徴詩といふものを

われもしてみむとてするなり

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ヴァン・レルベルグ「葡萄や芽(めざ)しし」

木苺の実のなる季節に人々は歌った、 私のたわんだ唇を、 夏の雨のように暖かい 私の長い髪を。葡萄の実のなる季節に人々は歌った、 私の半ば閉じた光る目を、 秋の空のように 物憂く曇った私の目を。私には味わいのすべて、輝きのすべてがある。 私は蔓植物…

ヴァン・レルベルグ「没薬の汁わが指よりながれて」

私のおののきにあなたの手を延ばして下さい。 それは私のモヘアの衣装、 それは没薬の、香油の、 安息香の衣装。 私の全身はこれで塗られ、 私の腰はこれにて撓んだ。さらに私を覆うものといえば 金色の毛髪だ。 それは太陽、私はその光のなかにやって来た、…

ヴァン・レルベルグ「印(おしで)のごとく」

あなたの心の上にこの身を委ねよう、 海の上の春のように。 不毛な海の平原では、 急速な風のせいで、 光の花以外の花は 育たないのだ。あなたの心の上にこの身を委ねよう、 海の上の鳥のように。 波と空間との永遠のたゆたいのなかで、 鳥はその疲れた翅を …

ヴァン・レルベルグ「面を覆へる者の如くして」

なぜおまえは古ぼけた夢想ともども 過去から立ち現れるのか? 私がまだ存在しない前におまえが夢みたことが、 いったい私に何の関わりがあるというのか?死んだ者たちの灰をかき起してはいけない。私の若かったころの歳月、 それはいまの私の思考には、 自分…

ヴァン・レルベルグ「その口の接吻をもて我にくちつけせんことを」

彼女は帯の結び目を解いて、素裸になると、 ふるえながら腕をひろげ、やってきた者を迎え入れた。その手は大気に触れ、静寂に触れ、夜に触れた。 そして、彼女のくらんだ目に陽の光がきらめいた。彼女の神のごとき接吻はおずおずとふるえ、 それはあたかも口…