人もすなる象徴詩といふものを

われもしてみむとてするなり

2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ヴァン・レルベルグ「首途」

青々とした野原に、 近くの森の静けさが徐々に拡がってくる。 乙女らはひどく疲れた様子で、 白い着物を後ろに垂らして、 夢想と神秘との言葉を 声低く歌いながら横切ってゆく。 黄金の液体のような、爽やかな陽光が、 雲間を洩れて 音のない流れのように下…

ヴァン・レルベルグ「幻の女」

朝靄にけぶる植物群のあいだを、 軽やかに、弾むように 逃げ去ってゆく女性に導かれて、 今朝私は、幸福な懶惰と静寂とに包まれてまどろむ、 年経りた、はるかなる楽園の奥へと連れ出された。 彼女はにっこり笑って ──蒼白い木の葉のあいだに朝がふるえてい…

ヴァン・レルベルグ「ニンフの洞にて」

たとえ目には見えなくとも、 心にて知るがよい、かれはそこにいる、 かつてのままに、ほのじろく神々しく。その岸辺にかれの手は憩う。 その頭はジャスミンの繁みに、 足は木々の枝をかるく揺する。木の間隠れにかれは眠っている。 唇と目とをかたく閉じ、 …

ヴァン・レルベルグ「まどかなるもの」

オパールの仄明りのもと、 物陰の眠気をさそうような暖かさ、 息も絶えだえの花々の発する温気、 朧ろに霞むものの現れ。 息づかいも話し声もきこえない、 しんとした belle-au-bois の部屋。 漠たる夢想の雰囲気のうちに、 ものの形を空気が歪め、引き延ば…