人もすなる象徴詩といふものを

われもしてみむとてするなり

埋めた記憶


私が用を足すのはきまって地下の共同便所
なぜならその下に父の遺骨が埋まっているから
たしかにこの手で父の遺骸を埋めた
同時にその記憶までも埋めてしまった

床がびしょびしょ濡れた不快な便所
壁には忌わしい虫がかさこそ音を立てている
私は用を足しながら床に目をやる
そこの亀裂から白骨が見えやしないかと冷や冷やしながら

いつだったか私はすっかり遺骨を掘り出した
同時に埋めてあった記憶が戻ってきた
取り返しのつかぬことをしてしまったという記憶が

用を足し了えた私はすべるように便所を出る
そしてだれにも見られなかったことを確認して
はじめてほっと安堵の吐息をもらすのだ