人もすなる象徴詩といふものを

われもしてみむとてするなり

あらわれ


まっかな唇に薄い布をあてがって
私をやさしいまなざしで見つめる

こころ弱くも悲哀に溺れる私に
不意にあらわれた仄かなまぼろし

みよ子さんと名前を呼べばすぐに会えそうな気がするのに
あなたと私とのあいだには
どうにもならない時空の隔たりが横たわっている

さやさやと鳴るすずしのような
銀色をしたあなたの声を
いましみじみと思い出す

のらくら者のらくちん境


温かいもの
親しげなものを求めて
こころの内部(オク)へ
ひたすら内部(オク)へと
もぐりこんでゆく
ひとつの意志

この乳白色の絶対境
ふうわりと柔かい砦に立てこもって
思うさま手足をのばし
のんべんだらりとする心地よさ

のらくら者よ
おまえの王国がそこにあるのなら
何を好んで別天地を求めよう

どこまでも懶惰な夢を追ってゆけ
のらくら者よ
時の流れを遡行して
嬰児の記憶を取り戻せ