ヴァン・レルベルグ「不意の訪れ」
朝まだき、このニンフの祠につどうもの、
ひとり、またひとり。
そして妖精たちがやってきたが、
なかでも美しいのがこちらの娘。
世界を経めぐり、
数千の齢を閲しながら、
なおもブロンドの巻き毛の少女であり、
子供の中の子供である娘。
さびしい海の拡がる彼方、
そこで光が生れた国で、
あるおごそかな日に彼女は生れた、
その優しい永遠の目を見開いて。
魔法の泉のそばの、
眠ったような大きな庭で、
奴婢は白い扇をゆるやかに使いながら、
彼女に風を送った。
またべつの奴婢は、
彼女が美しく輝くように、
また死が彼女の上を滑って行くように、
彼女の褐色の体になめらかな透明の香油を塗った。
ある美しい朝のこと、
運命の導くがまま、
陽に照らされた海の上へ彼女は乗り出した、
陸から吹く風にのって。
かくて今、彼女はわれらの
霧深い空の下へやってきた、
そしてその思考は
漠然たる青い黎明となった。
かよわく、あおじろく、やや陰気で、
晴天の色に事物の色、
半分は月で半分は太陽、
なかば夢、なかばうつつ。
そんな彼女の神のような声が、
蒼ざめた影像ごしに、
そのふしぎな言葉で、
美の甘い夢を歌った。