ヴァン・レルベルグ「とば口にて」
彼の魂の夢がついに実現する、
それは讃えるべき、突然の驚きだ。
彼は魅了され、ふるえながら、気もそぞろに立ち尽す。
混沌とした夜明けはすっかり薔薇の樹で満たされている。
驚くべき、青くかすんだ世界が、
光と影との半透明の霧から現れる。
淡い色の奇妙な花々、鳥の歌、
匂いの広がり、水の澄明、
光の束、たわわに実った葡萄の房、
おぼろげな緑玉髄や紫水晶。
およそ生あるものでこの境に触れたものはない。
このめくるめく道では空気さえもが純潔だ。
しかし愛はここに微笑み、夢はここに息づく。
肉桂や没薬の匂いのたちこめるあたりに、
だれかがやってきて、大気を輝かせてくれるだろうか。
足音が聞こえるような気もするが、見渡すかぎり人影はない。
愛神アモルは自分が生きていることを知らず、己の美しさに気づいていない、
彼の目にはまだ魂の発露はうかがえず、
そこにはただ光と、永遠の春があるのみ。
彼はただ独りいて、時は過ぎゆく、彼は耳をすまし、沈黙を聞く。
また一輪の花が目覚めるのを見、
そよぐ枝を、光を、蜜蜂を、
薔薇色と緑色との陽射しに延びてゆく影法師を眺めやる。
彼はこの壊れやすい宇宙をかき乱そうとはしない。
希望は彼の思考の縁でとどまり、
祈りは彼の唇に上るや、叶えられる。
彼はようやく達成したばかりの欲望のうちに
全世界を予感し、未来を知った。
彼がその美しい目を、事物の壮麗さや、
夜明けや、青い朝や、光や、薔薇に対して閉ざすにつれ、
彼の魂はそれらの神性とひとつになっていく。
彼は斃れる、軽やかな翼に比して重すぎる心をもち、
空から地上に引き寄せられる、
魔法にかけられた森鳩のように。
目に見えない射手の放つ黄金の熱い矢が、
命中する前にその飛翔で彼を殺したのだ。