人もすなる象徴詩といふものを

われもしてみむとてするなり

ヴァン・レルベルグ「妖術」

我々のうちだれ一人として気にもかけないが、
ある種の女たちがいて、
そのふしぎな歌声がいとも簡単に、無造作にといいたいほど、
まるで遊んでいるかのように、
黄昏のなかで、我々のまわりに、
魔法の薄絹のようなものを織る。
青白い、薔薇色の夢の織りなす薄絹は、
溶けた大気のなかで火のようにみえ、
それが少しづつ
我々と世界とのあいだに
割って入り、広がってゆく。
薔薇と竜胆とが妙に絡まりあった薄絹から、
我々が抜け出すことはよもやあるまい。
我々のうちだれ一人として気にもかけないが、
ある種の女たちがいて、不可解にも、
奇妙な笑みを唇に浮べ、
我々の魂が
つまらぬわらべ歌にかかずらっている間に、
我々のまわりに、夢の中でのように、
まるで遊んでいるかのように、
魔法のかかった小さい歩みで同心円の環を描く。
それはたえずより狭く、より密になり、
我々の居場所を、少しづつ、四方から囲い込む。
世界の広大な地平のすべてを囲い込んだ環から、
我々が抜け出すことはよもやあるまい。