人もすなる象徴詩といふものを

われもしてみむとてするなり

ヴァン・レルベルグ「選ばれた者」

神々の幻影の路を
その男は歩いて行く、
もしすべてが幻影であるとすればだが。
その男が夢みるのは極上の夢、
人を信じ己を信じ、
おのが熱狂に一心に入れ揚げ、
虚しき事物よりもさらに虚しく、
あたかも存在しない人間であるかのように、
足下の影でもって
不確かな地面を掠めてゆく。

きみの欲しいものを言いたまえ、
と神々が笑いながら言う。
しかし神々のうちに憩うものにとって
生活上の要求などあるはずがない。
彼は驚く、いったい何の欲望か、と。
彼がおのれの望むところを知っているだろうか。
神々の贈り物の最上のものでさえ、
彼の気楽さほどの価値があるだろうか。
彼にはこの世で恐るべきものなど何一つない、
彼は子供のように単純だ、
彼はおのれを知らず、
それゆえに意図せずして
全能の力を
その小さい手に収めているのだ。

ヴァン・レルベルグ「神秘の薔薇の樹」

幾千もの薔薇をつけた、
美しい楽園の薔薇の樹よ、
芳香に包まれて輝き、
光のなかに憩う樹よ、

誇りかな薔薇をつけた、
閉ざされた苑の美しい薔薇の樹よ、
そなたに親密な木蔭がつくる網の目を
下草の上に拡げるものよ、

そなたのまわりには、
あのつつましやかでやさしい婢女たちが、
身をふるわせながら、西から東へ、
ゆっくりと滑っては戻ってくる、

そうするうちに、夜が忍び足で近づいてきて、
そのヴェールを彼女らの上に拡げ、
おのが懐へ抱き込んでしまう、
あの厳かな時がやってくる。

無数の薔薇をつけた薔薇の樹よ、
そなたは己のうちに、私たちの心を彼女らと一つにする、
そなたの輝かしい子供である彼女らと、
木蔭でそなたに仕える私たちと。

ヴァン・レルベルグ「気軽な心」

さながら麦畑を横切ってゆく子供のように無邪気な心で
単純なものごとに微笑みかけるという、この幸せが、
ふたたび閉ざされたわれらの魂のなかで、
どうか末長く続きますように。

刈られた麦の穂が風にそよぎ、
黄金色の大きな麦は彼女よりも丈がある。
麦は前に開き後ろに閉ざし、
小径ははや始まりもなければ終りもない。

けれども彼女は先のことなど頓着せず、
こともなげに歩いてゆく。
旅路の果ての薄暗がりに、
彼女の歩みを待ち設ける戸口があるのを知っているから。

おそらく道はまだまだ遠い、
けれどもそれが常の道、人生なのだ。
そんなわけで彼女は道のことは忘れ果て、
自分の歌を思い出す。

ヴァン・レルベルグ「輪舞」

あなたの丸々とした手をわたしの手に取らせて、
わたしの手にあなたの薔薇色の丸々とした手を。

さあロンドを踊りましょう。

わたしの唇は丸い、わたしの胸も丸い、
酒盃や葡萄の房のように。

さらさらした金のような長い髪に
わたしは薔薇の花冠を載せた。

あなたの薔薇色の手をわたしの手に。

深々とした夜のお月さま、
明るい朝のお天道さま、

わたしのあらわな腕、ブロンドの巻き毛、
わたしの口づけ、それからわたしの心、

この世でとびきり美しいものは
丸いもの。

さあロンドを踊りましょう。

ヴァン・レルベルグ「間奏曲」

また思いみるがよい、
薄青色の目をした晴朗なる魂よ、
ここにはいかなる苦しみもなく、
すべては愛なのだ。
われらの境涯たるこの孤独には、
人間についてわれらを悩ます何物もない。
彼らのところに平和が舞い降りるに任せよ。
すでに夕べが降りてきた、すべて忘れ去りたまえ。
そしてこの幸福の庭にやってきたまえ、
ここでは軽やかな時の合唱が、
夢想と微笑とのさなかにあって、
生きとし生けるものを魅了する。

丸い池のまわりに、
薔薇の花が額を取り囲むように、
ブロンドの少女の一群が
ロンドを踊りながら練り歩き、
青い池を囲んでしばし立ち止まっては、
また踊りだし、
めいめいが互いに華奢な手を差し延べる。

みんなが環になって歩き、
歩きながら歌をうたう。
みなが歌い、声を交わし、
そのブロンドの清らかな姿は
波に映え、
金魚たちのあいだを
舞い泳ぐ。