人もすなる象徴詩といふものを

われもしてみむとてするなり

ヴァン・レルベルグ「訣別」

宵闇が薔薇の茂みを通って行った。
このあえかなる魅惑を乱すのを恐れ、
知られざるものたちが、官能的に、
海によく似た、ヒアシンス色のヴェールで
事物を覆って押し鎮めた。
すべては静謐のうちに消えてゆき、
もはや触れえぬ昨日の日となった。
死せる事物は不滅の相を呈し、
他のものはものうげに空に立ち昇っていった、
すべてのものはわれらの心に悔いを残すことのないよう、
われらを忘れ、またわれらに忘れられた。

けれども、この至高の時にあって、
われらの顔はなおも幸福のほうを向き、
夜に遅れ、訣別に、涙に遅れ、
われら自身に遅れ、
たとえ虚しい望みだとしても、われらはこの美しい日を
いま一度生きたかったのだ、孤独なわれらに宵闇が迫り、
孤独なわれらは事物を振り払うことができなかった、
薔薇の花から匂いが失せ、
われらの戸口から光が消えるそのときにも。

ヴァン・レルベルグ「夕暮時」

空が翳り
東から西へと、
沈黙のうちに
柔らかな手で
暗色の絹に蒼白い星を織り込んだ
薄紗を拡げる。

黄昏と黎明との
両岸にまたがる眠りが、
夢の蔓草で、
今日の一日を明日へとつなぐ。

過ぎゆく時が
歩みを止め、テラスの入口で
サンダルの紐を結ぶ、
そして肩越しに眺めるのだ、
楚々たる柳の川端に
宵闇が落ちかかるのを。

ヴァン・レルベルグ「薔薇のアーチの下で」

そこは永遠の微笑が嬉戯する
庭園にしてまた居処。
日時計の青い影と泉とが
時を刻む。
そこではすべてが思い出の中にあるかのよう。
戸口には孤独と夢想とが
二匹のおとなしいスフィンクスのようにねそべっていて、
だれもその戸口を跨げない。

金の階段の上に白い扉がある。
手すりには昼顔がからみついている。
通路の上にはみごとな花飾りや
薔薇のアーチがある。
そこを登ってゆくのはただ光あるのみ。

光は目に見えない女王の裳裾、
あとに続くのは
沈黙という名の扈従。

ヴァン・レルベルグ「曰く言い難きもの」

魂と火とのひとつがい、
翅と花との絡み合い、
君らに似合いの言葉を
私は心中に探し求める。

しかし君らは曰く言い難きもの、
君らのふしぎな歌は
あるかなきかの接触と放射状の沈黙とによるほか
表しようもないものだ。

なればこそ、心優しい女が
委細を知らぬまま
この辛気臭い努力をあわれと思って、
こちらへその小さい口を差し出すのだ。

単純で甘美な少女期に特有の
花と開いた口づけは
無限に渇する唇を
沈黙で充たすに十分だ。

ヴァン・レルベルグ「祈願」

親愛なる善の聖霊、美の聖霊よ、
静寂のなかで実在の上に
そっと息を吹きかけ、
心中に気ままに憩わせている
素朴な叡智と信念とをもたらすものよ。
もし私の魂がきみの存在に背馳しないとすれば、
どうして私が悲しげな目をして過ちを犯すことなどありえただろう。
きみは生きとし生けるもののうちに、
空の下で夢みるすべてのもののうちにいたのではないか、
見知らぬ人が身をかがめて、
その優しい、輝かしい顔を映してみる
あらゆる無垢のうちにいたのではないか。
おぼろげな美しい天使よ、私が遥かなる兄よと呼びかけ、
白い翼の神のような姉よと呼びかけたのは、
きみのことではなかったか。
すべての存在、すべての事象の奥底に、
きみは目には見えずとも確かにいたのではないか、
薔薇の内部にひそむ香りのように、
日の出前の太陽のように。
すべての願いのうちに、すべての怖れのうちに、
そうだ、清らかで楚々たる、親愛なる魂よ、
すべての望みのうちに、
この世の万有のうちに、確かにきみはいたのだ。
そして運命もまた、われらの考えを嘉しつつ、そう望んでいるのだ、
確かにそれはきみであったと、そしてきみの唇に、
いつか私は暗がりで愛におぼれて
自分の口を押し当てたのだ、
きみだけを、つねにきみを。